「カンナの種類って、いったいどれくらいあるんだろう?」——園芸店やカタログを見ていると、カンナにも本当にたくさんの名前があって、どれを選べばいいのか迷ってしまいますよね。
実は、学術的に認められているカンナの野生種は約10〜11種ほど。でも、園芸の世界では数千もの品種が存在していると言われています。このギャップ、いったいなぜ起こるのでしょう?
結論から言うと、カンナの「種類」を正しく理解するには、「学術上の種(野生種)」 と 「園芸品種(交配種・栽培品種)」 を分けて考える必要があります。
この記事では、カンナの基本的な分類から、最新の種子系F1品種の特徴、さらに品種を選ぶときに押さえておきたい実用的なポイントまで、詳しく解説していきます。
カンナの種類をひも解く前に:カンナってどんな植物?
カンナは、美人蕉科(Cannaceae)という科に属する唯一の属です。原産地は熱帯・亜熱帯アメリカで、鮮やかな花色と大きな葉が特徴的な植物です。地下茎(根茎)で増えていく性質を持ち、暖かい季節にはぐんぐんと成長します。
よく見かけるカンナの花の色は、赤、オレンジ、黄、ピンク、白など実に多彩。これだけバリエーション豊かなので、「種類がたくさんある」という印象を持つのは当然と言えるでしょう。
学術的に認められたカンナの野生種は約10種
ここが一番のポイントです。植物学の世界では、長年にわたる研究の結果、カンナ属(Canna)には現在約10〜11の野生種が存在するとされています。
かつては50種以上が記載されていた時期もありましたが、1985年のMaas氏の研究や、1988年のMaas & Maas氏の研究によって大幅に整理・再編されました。この分類は現在も広く受け入れられていて、例えば北米の植物相をまとめた『Flora of North America』(1993年)でも、この分類が採用されています(出典:eFloras.org)。
この中で特に重要なのが、カンナ・インディカ(Canna indica) という種です。この種は極めて多型的(同じ種の中でも姿が大きく変わる) で、過去に別の種だと考えられていたものが、実はカンナ・インディカの別名(シノニム)だったというケースが非常に多くあります。
具体的には、Canna edulis(かつて食用として注目された種)やCanna coccinea、Canna warszewicziiといった名前は、現在ではカンナ・インディカの仲間として扱われることが多いんです(出典:NCATS Inxight Drugs、米国国立衛生研究所)。
園芸店で見かけるカンナはほとんどが交配品種
では、私たちが園芸店やホームセンターで「カンナ」として買っているものは何かというと、これらの野生種をもとに、長い年月をかけて作られた交配品種(園芸品種) です。
世界中で数えきれないほどの品種が作出されていて、花の大きさや形、色の濃淡、草丈、葉の色(緑葉だけでなく、ブロンズ色や斑入りも!)など、そのバリエーションは驚くほど豊かです。
例えばオーストラリアでは、19世紀にはすでにカンナが亜熱帯スタイルの庭園植物として人気を博し、1888年までにはビクトリア王立植物園が72品種をリストアップしていたという記録が残っています(出典:Royal Botanic Gardens Victoria)。園芸品種の歴史の古さと多様性がうかがえますね。
つまり、学術上の「カンナの種類(野生種)」は約10種ですが、園芸ファンにとっての「カンナの種類(品種)」は、事実上無限に近いと言っても過言ではないのです。
知っておきたい! 最新の種子系F1カンナ
そんな数ある園芸品種の中でも、近年特に注目を集めているのが種子から育てられるF1品種です。従来のカンナは根茎(球根)で増やすのが一般的でしたが、種子から育てられる品種が登場したことで、栽培のハードルがぐっと下がりました。
ここでは、日本の主要シードメーカーであるタキイ種苗が取り扱う、代表的な2つの系統を紹介します。
F1サウスパシフィック系:世界初のF1カンナ
タキイ種苗が販売するF1サウスパシフィック系は、世界初のF1カンナ品種群として知られています(出典:タキイ種苗品種カタログ、2026年7月確認)。
主な特徴は以下の通りです。
- 播種(タネまき)から最短75日で開花
- 草丈は約40〜50cmの矮性(わいせい)タイプ
- 基部からの分枝性に優れ、次々と花を楽しめる
ラインナップはイエロー、ホワイト、スカーレット、オレンジ、ローズ、アイボリーの6色。なんと、スカーレットとオレンジは、アメリカの権威ある園芸賞AAS(オール・アメリカ・セレクションズ)に入賞しているんです。これだけ評価が高いと、安心して選べますよね。
トロピカル系:長期間楽しめる矮性カンナ
同じくタキイ種苗のトロピカル系も、種子から育てられる矮性カンナです。
こちらも75日ほどで開花しますが、特徴は12cm鉢でも草丈約40cmで開花するコンパクトさ。初夏から晩秋まで長い期間花を楽しめるのも魅力です。
カラーバリエーションは、コーラル、ブロンズスカーレット(赤銅色の葉が特徴的)、レッド、ローズ、イエロー、ホワイト。ブロンズスカーレットは、花だけでなく葉の色も楽しめる一石二鳥の品種です。ただし、他の品種より開花がやや遅めという特徴もあるので、植え付け時期には注意が必要かもしれません。
これらの種子系品種は、従来の根茎(球根)から育てる品種に比べて、初心者でもチャレンジしやすいという大きなメリットがあります。
カンナの品種を選ぶ4つの実用ポイント
せっかくカンナの種類について理解を深めたところで、実際に品種を選ぶときに役立つ視点を整理しておきましょう。
1. 草丈で選ぶ(矮性 vs 高性)
コンテナや鉢植え、花壇の手前に植えたいなら矮性(約40〜80cm)、花壇の後方や目隠しに使いたいなら高性(約1〜2m)がおすすめです。
2. 葉の色で選ぶ(グリーンリーフ vs ブロンズリーフ)
花が主役のグリーンリーフ系と、葉色が銅色や赤茶色で花と葉のコントラストが美しいブロンズリーフ系があります。日当たりが強くても葉焼けしにくい傾向があるので、ブロンズリーフ系は特に夏の強い日差しにも強い印象です。
3. 開花時期で選ぶ
一般的なカンナは初夏から秋まで咲き続けますが、品種によって開花の早晩があります。上で紹介したブロンズスカーレットはやや開花が遅めなので、早く花を楽しみたい場合は別の品種を選ぶといいでしょう。
4. 耐寒性をチェックする
カンナは熱帯・亜熱帯原産なので、日本の寒冷地では冬に根茎が枯れてしまうことがあります。地域によっては冬に堀上げて保存する必要があるので、自分の住んでいる地域に合った品種選びが大切です。
カンナは花だけじゃない! 意外な使われ方
カンナの奥深さは、観賞用だけにとどまりません。実は、世界中でさまざまな形で利用されてきた歴史があります。
例えば、カンナ・インディカ(Canna indica) の種子は、ビーズ(数珠やロザリオ) やマラカスの材料として使われてきました。また、根茎はクズウコン(arrowroot)の代用として食用にされたり、人間や家畜の薬用にも用いられてきたんです(出典:eFloras.org)。
日本ではあまり馴染みがありませんが、熱帯地域では今でもこうした使われ方をしている地域があることを知っておくと、カンナという植物への見方がちょっと変わるかもしれません。
カンナの受粉生態:種類によって送粉者が違う?
さらに興味深いのが、カンナの花の色によって送粉者(花粉を運ぶ生き物)が異なる可能性があるという点です。
植物学の知見によると、薄黄色の花をつけるカンナ(Canna flaccida, Canna glaucaなど)は夕方に開花し、スズメガが送粉すると考えられています。一方で、赤や橙色の花を咲かせる種は、ハチドリが送粉すると言われています(出典:eFloras.org)。
日本にはハチドリはいませんが、こうした生態の違いを知っておくと、カンナが長い進化の歴史の中で、それぞれの地域の環境に適応してきたことが感じられますよね。
また、カンナは自家受粉しやすい性質も持っています。これは、花が開く前に花粉が同じ花の柱頭に落下する仕組みがあるためで、温室などで栽培すると特に結実しやすいと言われています。
カンナの種類を選ぶなら、まずは最新の種子系から始めてみよう
ここまで、カンナの学術的な分類から、園芸品種の豊富さ、そして品種を選ぶポイントまで解説してきました。
繰り返しになりますが、カンナには学術上の「野生種(約10種)」と園芸上の「品種(数千)」という二つの側面があります。園芸店でカンナを選ぶときは、この違いを意識することが、迷わずに選ぶ第一歩になるでしょう。
もしこれからカンナを育て始めるなら、種子から育てられるF1品種が非常におすすめです。特に、タキイ種苗のF1サウスパシフィック系は、AAS入賞実績もある信頼の品種群です。
カンナの種類選びにおすすめの品種
F1サウスパシフィック スカーレット
F1サウスパシフィック スカーレットは、世界初のF1カンナでありながらAASに入賞した実力派。赤い花が華やかで、初心者でも育てやすい矮性タイプです。播種から75日で開花する早さも魅力です。
F1サウスパシフィック オレンジ
F1サウスパシフィック オレンジは、スカーレットと同じくAAS入賞品種。暖かみのあるオレンジ色が庭を明るく彩ります。コンパクトな草姿なので、鉢植えや花壇の前栽にも最適です。
トロピカル ブロンズスカーレット
トロピカル ブロンズスカーレットは、花だけでなく赤銅色の葉も楽しめるお得な品種。葉と花のコントラストが美しく、観葉植物としての価値も高いです。開花はやや遅めですが、長く楽しめるタイプです。
トロピカル イエロー
トロピカル イエローは、明るい黄色の花が特徴。夏の暑い日差しの下でもひときわ存在感を放ちます。コンパクトで扱いやすく、ガーデニング初心者にもおすすめできる一品です。
カンナの世界はとても奥深く、学術と園芸の両面から見ることで、より一層その魅力が伝わってきたのではないでしょうか。今回紹介したポイントを参考に、ぜひあなたにぴったりの一株を見つけてみてください。

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