「引き回し鋸」って、どんなノコギリかご存じですか?
電気工事や内装工事の現場で、石膏ボードにコンセントボックス用の穴をあけたり、配線を通すための開口を作ったりするときに大活躍する工具です。
「回し引き」や「廻し挽き鋸」とも呼ばれていて、その名の通り、ぐるっと回すようにして使うのが特徴。真っすぐ切るというより、曲線を描くように穴を切り抜くのに特化しているんですね。
でも、いざ「引き回し鋸を買おう」と思っても、種類やメーカーが多くて、どれを選べばいいか迷ってしまいますよね。
実は、現場のプロたちも「押し切りと引き切り、どっちがいいんだろう」「替え刃式と使い捨て式、どっちがお得?」というところで結構悩むものなんです。
そこでこの記事では、引き回し鋸の基本的な特徴や選び方のポイントを押さえつつ、電気工事をはじめとした現場で本当に使えるおすすめ製品を紹介していきます。
現場でバリバリ使うプロはもちろん、これからDIYで挑戦してみたい初心者の方も、ぜひ参考にしてみてください。
引き回し鋸とは?基本的な特徴と用途
まずは、引き回し鋸がどんな工具なのか、改めて見ていきましょう。
「引き回し鋸」は、刀身(刃)が細くて薄いのが大きな特徴。この細い刃のおかげで、小さな穴からスタートして、ぐるっと回すようにして曲線を切り抜くことができます。
よく使われるシーンは、石膏ボードにスイッチボックスやコンセントボックスを取り付けるための開口作業。
他にも、合板やベニヤ板、ケイカル板などの内装材に穴をあけるときにも活躍します。
電動のジグソーやホールソーでも同じような作業はできますが、引き回し鋸の良いところは、電源やバッテリーが不要なこと。ちょっとした修正や、狭い場所での作業にもサッと使えるのが魅力です。
現場では、腰道具にさしておいて、必要なときにさっと取り出して使う……そんな「相棒」的な存在ですね。
引き回し鋸を選ぶ前に知っておきたい3つのポイント
さて、ここからが本題です。
引き回し鋸を選ぶときに、まず押さえておきたいポイントは大きく分けて3つあります。
- 押し切りタイプか、引き切りタイプか
- 替え刃式か、使い捨て(非替刃)式か
- 折りたたみ式か、固定式か
それぞれ、しっかり見ていきましょう。
1. 押し切りタイプと引き切りタイプの違い
まず、いちばん重要と言っても過言ではないのが、この「押し切り」と「引き切り」の違いです。
簡単に言うと、押し切りタイプは「押す」ときに切れるように刃の目(歯)が向いていて、引き切りタイプは「引く」ときに切れるように刃の目が向いています。
押し切りタイプの特徴
押し切りタイプは、刃を押し出すときに材料を切るので、石膏ボードの表面の紙を引っ張らずにきれいに仕上げられるのがメリット。石膏ボードは表面の紙が破れると見た目が悪くなってしまうので、仕上がりを重視する現場では押し切りが好まれる傾向にあります。
ただ、硬い材料(ベニヤ板や合板など)を切るときは、押す力が必要になるのでやや力がいるかもしれません。
引き切りタイプの特徴
引き切りタイプは、刃を手前に引くときに切れるので、ベニヤ板やケイカル板など、比較的硬い材料に向いています。引くときの方が力が入れやすく、コントロールもしやすいという特徴があります。
石膏ボードでも使えますが、引き切りの場合は表面の紙がめくれることがあるので、仕上がりを気にする場合は注意が必要です。
どっちを選べばいいの?
結論から言うと、主に石膏ボードを扱う電気工事や内装工事なら「押し切りタイプ」、合板やベニヤ板など硬い材料を扱うことが多いなら「引き切りタイプ」 がおすすめです。
ただ、最近では「押しても引いても切れる」両用タイプも登場しているので、汎用性を求めるならそちらも検討してみてください。
2. 替え刃式と使い捨て(非替刃)式の違い
次に考えるのは、刃の交換方法です。
替え刃式
替え刃式は、刃が鈍ったら刃だけを交換できるタイプ。本体はそのまま使い続けられるので、ランニングコストを抑えられるのがメリットです。
頻繁に使うプロには断然こちらがおすすめ。替え刃も用途に合わせて選べるので、作業に合わせて使い分けることもできます。
使い捨て(非替刃)式
一方、使い捨て式は、刃が鈍ったら本体ごと買い替えるタイプ。価格が安いのが特徴で、あまり使わないDIY用途や、予備用として持っておくのには適しています。
ただし、頻繁に使うとどんどん刃が鈍っていくので、プロの現場メインで使うのはちょっと厳しいかもしれません。
3. 折りたたみ式と固定式の違い
収納方法も、使い勝手を左右する大事なポイントです。
折りたたみ式
折りたたみ式は、使わないときに刃を折りたたんでコンパクトに収納できます。腰道具にさしておいてもじゃまにならないので、現場を動き回るプロに人気があります。
固定式
固定式は、折りたたみ機能がないのでその分、強度がしっかりしているのがメリット。がっちり固定されているので、力強い作業ができます。
ただ、収納するときはケースなどに入れて持ち運ぶ必要があるので、携帯性は折りたたみ式に劣ります。
電気工事現場で人気の引き回し鋸おすすめ5選
ここからは、実際に現場で評価の高い引き回し鋸を5つ紹介していきます。
どの製品も、プロの間で実績のあるものばかり。それぞれの特徴をしっかり比較して、自分に合った一本を見つけてください。
1. 電工プロ折りたたみ押切りノコ JOMT-120
まず最初に紹介するのは、ジェフコム(デンサン)の「電工プロ折りたたみ押切りノコ JOMT-120」。
この製品は、電気工事のプロに圧倒的な支持を得ていると言っても過言ではない、業界定番の一本です。
何よりの特徴は、折りたたみ式でコンパクトなのに、替え刃式で経済的という点。腰道具にさしておいてもじゃまにならず、必要なときにサッと取り出して使えます。
グリップは滑りにくく、手にしっかりフィットする形状なので、長時間の作業でも疲れにくいのも魅力です。
スペック
- 刃長:120mm
- 全長:255mm
- 質量:130g
- 切り幅:1.3mm
押し切りタイプなので、石膏ボードの表面の紙を傷めずにきれいに仕上げられます。
向いている人
- 電気工事や内装工事を頻繁に行うプロ
- 携帯性と経済性を両立させたい人
向いていない人
- ごくたまにしか使わないDIYユーザー(コスト的に替え刃式はオーバースペックな場合も)
注意点
- 価格は販売店によって変動するので、購入前に確認しましょう
2. ライフソー電工ペッカー90
次に紹介するのは、岡田金属工業所(ゼットソー)の「ライフソー電工ペッカー90」。
この製品の最大の特徴は、押しても引いても切れるというユニークな目立て。
「←引き6:4押し→」という独自のバランスで刃の目が立てられていて、まさに両用タイプの決定版と言えます。
先端がR形状になっているのもポイント。壁の中の配線を傷つけにくいという、現場ならではの安全設計が施されています。
スペック
- 全長:225mm
- 刃渡り:90mm
- ピッチ:1.60mm
- 質量:65g~84g
刃渡りが90mmとやや短めなので、小回りが利きやすく、狭い場所での作業に強いです。
向いている人
- 電気工事・ガス工事・リフォームを行うプロ
- 石膏ボードと合板、どちらもよく切る人
向いていない人
- より長い刃渡りを必要とする作業をする人
注意点
- 適合替刃が複数あり、用途に応じて使い分けられます
- 価格は販売店によって変動します
3. スマートソー 廻挽き
続いては、タジマツール(TJMデザイン)の「スマートソー 廻挽き」。
タジマと言えば、現場で使われる測定工具や切断工具の老舗メーカー。そのタジマが送り出すスマートソーシリーズの一本です。
150mmの引き鋸刃を搭載していて、開口作業に最適な長さを持っています。
特徴的なのは、アール形状のグリップ。手のひらにフィットして力が入れやすく、長時間の作業でも疲れにくい設計です。
さらに、スマートソーシリーズは柄(グリップ)が共通で、シリーズ内の替え刃がすべて使えるというメリットもあります。
スペック
- 全長:275mm
- 刃長:150mm
- 質量:124g
- 切り幅:1mm
向いている人
- 電気・設備・内装・造作の各職種
- 開口作業を多く行う人
向いていない人
- コンパクトさを最優先する人(折りたたみ式ではありません)
注意点
- 定価は3,080円ですが、販売店によってかなり価格差があります
4. カッター挽き廻し鋸 217BN
4つ目は、オルファの「カッター挽き廻し鋸 217BN」。
オルファと言えばカッターナイフのイメージが強いですが、実は引き回し鋸も作っているんです。
この製品の面白いところは、石膏ボードカットに特化した挽き廻し鋸と、M厚型刃カッターが一体化している点。つまり、1台で鋸とカッターの2役をこなせます。
腰道具の数が増えてしまう……という悩みを解決してくれる、まさに「省スペース」を追求した製品です。
刃は押しても引いても切れる茨目刃を採用。石膏ボードの切断に最適化されています。
スペック
- 全長:175.5mm
- 刃長:135mm
- 質量:100g
向いている人
- 石膏ボード作業を多く行う人
- 工具の数を減らして身軽に動きたい人
向いていない人
- 主に木材の曲線切りを目的とする人(石膏ボード特化型です)
注意点
- 替刃は専用のもの(XB217、MTB10B)が必要です
5. ハンディ押し切りノコ OM-110
最後に紹介するのは、ジェフコムの「ハンディ押し切りノコ OM-110」。
ここまで紹介してきた製品が替え刃式だったのに対し、この製品は使い捨て(非替刃)式。
刃が短く安定感があり、昔ながらの木製グリップが味わい深い一品です。
価格がリーズナブルなので、予備用やたまにしか使わない人にぴったり。コンパクトで扱いやすいのも良いところです。
向いている人
- 予備用としてもう1本欲しい人
- たまにしか使わないDIYユーザー
- 予算を抑えたい人
向いていない人
- 頻繁に使用するプロ(切れ味が落ちたら買い替えが必要で、ランニングコストがかかります)
注意点
- 替え刃が利かないので、切れ味が落ちたら買い替えです
- 価格は変動する可能性があります
引き回し鋸に関するよくある質問
ここからは、引き回し鋸についてよく聞かれる質問をまとめてみました。
「回し引き」と「引き回し鋸」は同じもの?
はい、同じものです。
「回し引き」は「引き回し鋸」の略称や別称として現場でよく使われる呼び方です。どちらも同じ工具を指しているので、呼び方が違っても中身は同じと思って大丈夫です。
DIYでも使えますか?
もちろん使えます。
ただし、頻繁に使うわけではないなら、替え刃式の高機能モデルより、使い捨て式のリーズナブルな製品から始めるのも手です。用途に合わせて選んでみてください。
どのメーカーの製品がいい?
これも「何をメインで切るか」によります。
石膏ボードがメインなら、押し切りタイプのジェフコムやタジマが人気。合板やベニヤ板など硬い材料も切るなら、ライフソーのような両用タイプや引き切りタイプがおすすめです。
刃の交換時期の目安は?
切れ味が明らかに落ちたと感じたら交換のサインです。
プロの現場では、作業頻度にもよりますが、数週間~1ヶ月で交換する人もいれば、数ヶ月持つ人もいます。使い方や材料によって大きく変わるので、あくまで目安として捉えてください。
引き回し鋸選びで失敗しないためのまとめ
ここまで、引き回し鋸の特徴や選び方、おすすめ製品を紹介してきました。
最後に、もう一度ポイントを整理しておきましょう。
引き回し鋸を選ぶときの3つのポイント
- 押し切りか引き切りか:石膏ボードなら押し切り、合板など硬い材料なら引き切りがおすすめ
- 替え刃式か使い捨て式か:頻繁に使うなら替え刃式、たまに使うなら使い捨て式でもOK
- 折りたたみ式か固定式か:携帯性を重視するなら折りたたみ式、強度を重視するなら固定式
おすすめ製品を改めておさらい
- 電気工事の定番・折りたたみ式なら 電工プロ折りたたみ押切りノコ JOMT-120
- 押しても引いても切れる万能タイプなら ライフソー電工ペッカー90
- フィット感抜群のロング刃なら スマートソー 廻挽き
- 鋸とカッターが一体化した省スペース設計なら カッター挽き廻し鋸 217BN
- リーズナブルな予備用なら ハンディ押し切りノコ OM-110
どの製品にもメリット・デメリットがあります。大切なのは、「自分がどんな材料を、どんな頻度で切るのか」をしっかり考えて選ぶこと。
現場で長く使う相棒だからこそ、じっくり比較して、自分にぴったりの一本を見つけてくださいね。

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