模型やDIYで塗装をするとき、塗料を薄めたり筆やエアブラシを洗ったりするのに欠かせないのが「ラッカー薄め液」です。
ただ、いざ買おうとすると「ラッカー薄め液」のほかに「ペイント薄め液」もあって、何が違うのか迷ってしまうことはありませんか?
間違った薄め液を選んでしまうと、塗料がダメになるだけでなく、プラスチックの素材を溶かしてしまうこともあります。この記事では、ラッカー薄め液の基本的な役割から、ペイント薄め液との違い、そして代表的な製品の特徴までをわかりやすく解説します。自分に合った薄め液を選ぶための判断材料として、ぜひ最後まで読んでみてください。
ラッカー薄め液とは?基本の役割と特徴
ラッカー薄め液は、ラッカー塗料を希釈(けいしゃく)するための専用溶剤です。塗料の粘度を調整して塗りやすくしたり、筆やエアブラシについた塗料を洗い落としたりするときに使います。
ラッカー塗料は、乾燥がとても早く、硬い塗膜になるのが特徴。そのため、模型やプラモデル、木工品などの仕上げに広く使われています。ラッカー薄め液には、トルエンやキシレンといった有機溶剤が含まれており、強い溶解力と速乾性を持っています。
一方、同じ「シンナー」と呼ばれるものでも、油性塗料用の「ペイント薄め液」は、成分や性質が大きく異なります。この違いを理解しておかないと、思わぬトラブルにつながるので注意が必要です。
ペイント薄め液との違いを比較
「ラッカー薄め液」と「ペイント薄め液」は、どちらも塗料を薄めるための液ですが、それぞれ対応している塗料や性質がまったく違います。具体的な違いを整理してみましょう。
対応する塗料の違い
ラッカー薄め液は、ラッカー塗料専用の溶剤です。Mr.カラーやガイアカラーといった模型用塗料のほか、金属や木工用のラッカースプレーにも使われます。
ペイント薄め液は、油性塗料(いわゆるペンキ) を薄めるための溶剤です。家庭用の油性ペンキや、木部・金属部に塗る一般塗料が対象になります。
この対応塗料の違いが、すべての基本です。間違えると大きなトラブルを引き起こします。
溶解力と乾燥速度の違い
ラッカー薄め液は溶解力が非常に強く、乾燥もとても速いのが特徴です。塗ったあとすぐに次の工程に進める反面、作業中にムラができやすいという面もあります。
ペイント薄め液は溶解力がラッカー薄め液より弱く、乾燥もゆっくりです。そのため、広い面を塗るときにムラになりにくいというメリットがありますが、乾くまでの時間がかかります。
臭いの違い
ラッカー薄め液は、独特のツンとしたシンナー臭がします。これはラッカー系溶剤に共通する特徴です。
ペイント薄め液は、どちらかというと灯油に近いような、重めの臭いがします。どちらにしても有機溶剤ですから、しっかりとした換気が必要なことに変わりはありません。
間違った薄め液を使うとどうなる?
ラッカー薄め液とペイント薄め液を間違えて使うと、どんなトラブルが起こるのかを具体的に見ておきましょう。
ペイント薄め液でラッカー塗料を薄めた場合
これはやってはいけない組み合わせの代表例です。ペイント薄め液の溶解力では、ラッカー塗料をしっかり溶かすことができません。その結果、塗料がドロドロのゲル状になってしまい、まともに塗れなくなります。
せっかく買った塗料が無駄になってしまうだけでなく、混ざった液を廃棄する手間もかかるので、絶対に避けたいところです。
ラッカー薄め液で油性塗料を薄めた場合
見た目は問題なく薄められて、きれいに塗れるように見えるかもしれません。しかし、ラッカー薄め液の強い溶解力は、下地の塗膜やプラスチック素材まで溶かしてしまうリスクがあります。
特に、プラモデルなどのABS樹脂はラッカー薄め液に弱いので、割れたりひびが入ったりする原因になります。一見うまくいっていても、時間がたってからトラブルが表面化することもあるので、油性塗料には必ずペイント薄め液を使うようにしましょう。
ラッカー薄め液の代表的な製品と特徴
ラッカー薄め液といっても、メーカーや種類によって仕上がりや使い勝手が異なります。ここでは、模型用塗料の代表メーカーであるGSIクレオスとガイアノーツの製品を中心に、特徴を紹介します。
Mr.カラーうすめ液
もっともポピュラーなラッカー薄め液です。Mr.カラーシリーズはもちろん、他のラッカー塗料にも幅広く使える汎用性の高さが魅力です。
メリット
- 入手しやすく、価格も安定している
- 初心者の最初の1本に最適
- 他社のラッカー塗料にも使いやすい
デメリット
- 乾燥が速いので、光沢塗装ではムラになりやすい
- 仕上がりのクオリティを追求するなら、用途に特化したタイプがある
向いている人
ラッカー塗料を使い始めたばかりで、まずは何を買えばいいか迷っている初心者の方。特定のこだわりがなく、汎用的に使いたい人にもおすすめです。
向いていない人
光沢感を極限まで追求したい方や、速乾性を重視するメタリック塗装をする方は、別のタイプを検討したほうがよいでしょう。
注意点
ABS樹脂など、プラスチックの種類によっては侵食される可能性があります。使用前に、目立たない場所でテストしてから使うようにしてください。
Mr.カラーレベリングうすめ液
乾燥を遅らせる「リターダー」が配合された、高品質タイプの薄め液です。塗料が平滑に広がりやすく、光沢のある美しい仕上がりを目指せます。
メリット
- エアブラシ塗装での「かぶり」を防止しやすい
- 筆塗りでのムラを抑えられる
- 塗料のパフォーマンスを引き出しやすい
デメリット
- 乾燥が遅い分、ホコリが付着しやすくなる可能性がある
- 基本タイプよりやや価格が高い
向いている人
つややかな仕上がりを重視する方。筆塗りやエアブラシでムラを抑えたい人にもぴったりです。
向いていない人
作業時間を短縮したい方や、速乾性を重視するメタリック塗装には不向きです。
注意点
パッケージには「エアブラシ専用」とありますが、筆塗りにも使用可能です。用途に合わせて使い分けてみてください。
ガイアカラーうすめ液(T-01)
ガイアノーツのラッカー塗料用基本薄め液です。コストパフォーマンスの高さが特徴で、Heavyユーザーからも支持されています。
メリット
- 量あたりの価格が安い
- Mr.カラーなど他社のラッカー塗料にも使用可能
デメリット
- Mr.カラーうすめ液より溶解力がやや強いとされる
- プラスチックへの影響をより注意する必要がある
向いている人
コストを抑えたい方。多量に使用する方にもおすすめです。
向いていない人
溶解力の強さが気になる方は、他の製品を選ぶとよいでしょう。
注意点
プラスチックへの攻撃性がやや強いため、塗料を落とすような用途には適さない可能性があります。使用前に必ずテストしてください。
ブラシマスター(T-06)
筆塗り用に開発されたリターダー入りの薄め液です。筆ムラが出にくく、初心者でも比較的きれいに塗装できるのが特徴です。
メリット
- 筆塗りに特化した設計
- Mr.カラーレベリングうすめ液と似た性能で、やや安価な場合がある
デメリット
- メタリック塗装には不向き
向いている人
筆塗りをメインとしている方。光沢を出したい方にもおすすめです。
向いていない人
メタリック塗装をする方や、超速乾を求める方には向きません。
ラッカー薄め液を使うときの安全対策
ラッカー薄め液は有機溶剤です。正しく使えばとても便利なアイテムですが、安全に使うためのルールを守ることが大切です。
換気は絶対に必須
ラッカー薄め液を使用するときは、必ず窓を開けて換気をしてください。シンナー臭を吸い込みすぎると、頭痛やめまいなどの健康被害につながるおそれがあります。
屋外で使うのが理想ですが、室内で使う場合は換気扇を回すなどして、空気を入れ替えながら作業しましょう。
防毒マスクと手袋を着用する
有機溶剤用の防毒マスクを着用することを強くおすすめします。使い捨ての不織布マスクでは、シンナー臭を防ぐことはできません。
また、液が直接肌に触れるとかぶれの原因になることがあります。耐油性のあるゴム手袋やニトリル手袋を着用して、皮膚への接触を避けるようにしてください。
火気厳禁
ラッカー薄め液は引火性がとても高いです。使用中はもちろん、保管するときも火の近くには絶対に置かないでください。タバコやコンロなどの火気がある場所での使用は避けましょう。
廃液の正しい処分方法
使い終わった薄め液や、洗浄に使った液は排水溝に流してはいけません。環境汚染の原因になるだけでなく、配管を傷めることもあります。
布や新聞紙に染み込ませて、しっかりと乾燥させたあとに、自治体のルールに従って「燃えるゴミ」または「不燃ゴミ」として処分するのが一般的です。地域によってルールが異なるので、お住まいの自治体のホームページなどで確認してください。
よくある疑問と回答
Q. ラッカー薄め液でプラモデルを洗浄しても大丈夫ですか?
プラスチックの種類によります。特にABS樹脂はラッカー薄め液に弱いため、変形やひび割れの原因になります。ランナー(部品がついている枠)の端など、目立たない部分でテストしてから使うようにしてください。
Q. 車の塗装にラッカー薄め液を使ってもいいですか?
市販車のクリア塗装は比較的強いですが、ラッカー薄め液は非常に溶解力が強いため、ツヤを損なうリスクがあります。また、下地まで侵食する可能性もあるので、車の塗装には使用しないほうが無難です。タッチペンの除去など、特殊な用途で使う場合も、目立たない場所で試してからにしましょう。
Q. ラッカー薄め液は水性塗料に使えますか?
いいえ。水性塗料には水や専用の水性うすめ液を使います。ラッカー薄め液を水性塗料に混ぜると、塗料が分離して使えなくなります。
自分に合ったラッカー薄め液を選ぶには
ここまで紹介してきたように、ラッカー薄め液にはさまざまな種類があります。自分に合ったものを選ぶためのポイントをまとめておきます。
まずは、使う塗料が何かを確認することが大前提です。ラッカー塗料なのか、油性塗料なのか、水性塗料なのか。この見極めができていないと、どんなにいい薄め液を選んでも意味がありません。
そのうえで、以下のような基準で選んでみてください。
- コストを重視するなら:ガイアカラーうすめ液(T-01)
- 初心者で迷ったら:Mr.カラーうすめ液
- 光沢のある仕上がりを目指したいなら:Mr.カラーレベリングうすめ液
- 筆塗りをメインにするなら:ブラシマスター(T-06)
どの製品にもメリットとデメリットがあります。自分の作業スタイルや求める仕上がりに合わせて、最適なものを選んでみてください。
ラッカー薄め液の正しい知識を身につけて、塗装をもっと楽しもう
ラッカー薄め液は、正しく選んで正しく使えば、塗装の幅を大きく広げてくれる便利なアイテムです。
ペイント薄め液との違いをしっかり理解しておくことで、塗料を無駄にしたり、素材を傷めたりするリスクを減らせます。また、安全対策をきちんと行うことで、気持ちよく作業に集中できるでしょう。
この記事で紹介した製品の特徴や選び方を参考にしながら、自分にぴったりのラッカー薄め液を見つけて、塗装ライフをより楽しいものにしてください。

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