トルクレンチを手に取ったはいいものの、「この目盛り、どうやって合わせるんだろう?」と困った経験はありませんか?
実はトルクレンチにはいくつか種類があって、それぞれ目盛りの合わせ方や読み方が違います。この記事では、プリセット型(クリック式)を中心に、トルクレンチの種類別の正しい目盛り合わせ方をステップバイステップで解説します。
これを読めば、あなたの手元にあるトルクレンチがどのタイプか判断できて、正しく設定して作業を始められるようになります。
そもそもトルクレンチの「目盛り」って何を合わせるの?
トルクレンチの目盛りは、「どれくらいの力でボルトを締めるか」という数値(トルク値)を設定するためのものです。
トルクとは、回転の中心軸から力をかける点(力点)までの距離(m)とかける力の大きさ(N)をかけ合わせた物理量で、単位は「N・m(ニュートンメートル)」で表されます。
つまり、目盛りを正しく合わせるということは、この「N・m」の値を適切に設定すること。これがズレてしまうと、ボルトの締め付けトルクが規定値から外れて、締めすぎによる破損や、締め不足による緩みの原因になります。
まずは自分のトルクレンチの種類を確認しよう
トルクレンチの目盛り合わせ方は、その種類によってまったく異なります。まずはあなたが持っているトルクレンチがどのタイプか確認してください。
大きく分けて、以下の2種類があります。
プリセット型(プレセット型/シグナル式)
締め付けトルクを事前に設定しておき、そのトルクに達すると「カチッ」という音や振動で知らせてくれるタイプです。現場での連続作業に最もよく使われるタイプで、目盛りはグリップ部分に刻まれています。
直読式(ビーム型/プレート型、ダイヤル型)
目盛りを直接読み取りながら、現在のトルク値を確認して締め付けるタイプです。ビーム型はKTCでは生産終了となっていますが、ダイヤル型は現在も製造・販売されています。検査や精密なトルク管理が求められる作業に向いています。
プリセット型トルクレンチの目盛り合わせ方
ここからは、最も一般的なプリセット型(クリック式)トルクレンチの目盛り合わせ方を、具体的な手順で解説します。
手順1:ロックつまみを緩めてロックを解除する
プリセット型トルクレンチのグリップ部分には、設定したトルク値が勝手に変わらないようにロックする機構がついています。まずはこのロックを解除するところから始めます。
グリップの根本にあるロックつまみ(ロックリング)を回して緩めましょう。多くの製品では、目盛りを動かせる状態になると「カラッ」と軽くなります。
手順2:グリップを回して目盛りを合わせる
ロックが解除できたら、グリップ全体を回転させて目盛りを合わせます。
目盛りの読み方には注意が必要です。本体に刻まれた基準線に、設定したいトルク値が合うようにグリップを調整します。このとき、目盛りの細かい単位(目盛りの1目盛りが0.5N・mなのか1N・mなのか)を事前に確認しておきましょう。
例えば、60N・mに設定したい場合は、基準線が「60」の位置にくるまでグリップを回します。目盛りが途中で止まったり、クリック感がある場合は、正しく設定できているサインです。
手順3:ロックつまみを締めて再びロックする
設定したいトルク値に目盛りが合ったら、今度はロックつまみをしっかり締めてロックします。このロックを忘れると、作業中にグリップが回って設定値がズレてしまうので、必ず行いましょう。
ロックが完了したら、もう一度目盛りが正しい位置にあるか確認してください。
手順4:ソケットを装着して締め付ける
設定が完了したら、目的のサイズのソケットを差し込んで、あとはボルトやナットを締め付けるだけです。力点(グリップの中央付近)を正しい位置で持ち、ゆっくりと回してください。
設定したトルク値に達すると「カチッ」という音とともに手応えが軽くなります。この音が聞こえたら、すぐに力を抜いて締め付け完了です。この「カチッ」という音の後も回し続けると、オーバートルク(締めすぎ)になるので注意が必要です。
直読式トルクレンチの目盛り合わせ方
直読式の場合は、「目盛りを合わせる」というよりは「目盛りを読み取る」という使い方になります。
ビーム型/プレート型の場合
ビーム型は、トルクをかけるとビーム(板バネ)がたわみ、そのたわみ量を目盛り板上の指針で読み取る仕組みです。使用前に目盛りがゼロを示していることを確認し、締め付けながらその都度数値を読み取ります。
ただし、前述の通りKTCのビーム型は生産終了となっています。中古品や他メーカー品を使用する場合は、本体の状態をよく確認してください。
ダイヤル型の場合
ダイヤル型は、目盛り盤と針でトルク値を直接読み取ります。使用前には必ず目盛りがゼロに戻っていることを確認してください。
多くのダイヤル型にはピークホールド機能(置き針)がついており、締め付け時の最大トルク値を記録できます。検査や品質管理で使われることが多く、構造が複雑な分、取り扱いにはより丁寧さが求められます。
トルクレンチの目盛り合わせでよくある失敗と注意点
ロックのし忘れ
これが最も多い失敗です。目盛りを合わせた後にロックをし忘れると、作業中にグリップが回って設定値がズレてしまいます。必ず「合わせたらロック」を習慣にしましょう。
力点の位置を間違える
トルクレンチはグリップの中央部分(メーカーによってはマークがついている)を握るのが正しい使い方です。根本や先端を持ってしまうと、正しいトルク値が伝わらず、誤差の原因になります。
カチッと鳴った後も回し続ける
プリセット型は「カチッ」という音が合図です。音がしたらそれ以上回さないでください。惰性で少しでも回すと、オーバートルクになってしまいます。
使用後のトルク戻しを忘れる
プリセット型トルクレンチは、使用後必ず目盛りを一番低い値(最小トルク)に戻してから保管してください。内部のバネに負荷がかかったまま長期保管すると、精度が低下する原因になります。
直読式のトルクレンチで注意したいポイント
直読式(特にダイヤル型)は精密機器です。強い衝撃を与えたり、落下させたりすると内部の歯車やバネが損傷し、正しい値が表示されなくなります。また、ダイヤル面を汚したり傷つけたりすると目盛りが読みにくくなるので、取り扱いには十分注意しましょう。
トルクレンチで「緩める」作業はできる?
よくある質問ですが、トルクレンチは「締め付け専用」の工具です。緩める作業には使わないでください。トルクレンチはあくまで規定のトルクで締め付けるための精密機器であり、緩める方向に力をかけると、内部の測定機構を損傷させる恐れがあります。
正しい目盛り合わせで安全な作業を
トルクレンチの目盛り合わせ方は、種類によって手順が大きく異なりますが、基本は「自分の持っているタイプを正しく理解する」ことに尽きます。
プリセット型ならロック解除→グリップ回転→再ロックの一連の流れを確実に。直読式ならゼロ点の確認と目盛りの正しい読み取り方をマスターしましょう。
どのタイプでも共通しているのは、以下の3つです。
- 使用前に必ず目盛りを確認する
- 正しい力点(グリップ中央)で操作する
- 使用後は適切な状態で保管する(プリセット型は最小トルクに戻す)
トルクレンチは精密機器です。正しい目盛り合わせを習慣にして、安全で確実な締め付け作業を心がけてください。もし設定方法に不安がある場合は、お使いのトルクレンチの取扱説明書を再確認するか、メーカーの公式情報を参照することをおすすめします。

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