「エアコンの取り付け、自分でやれば工事費が浮くよな」
そう思って調べ始めたあなた。YouTubeやブログを見ていると、こんな言葉が目に飛び込んできたんじゃないでしょうか。
「真空引き不要」「ポンプなしで簡単取り付け」
これ、めちゃくちゃ気になりますよね。だって真空ポンプって買うと1万円前後するし、作業も面倒そうだし。
でも、ちょっと待ってください。
その「真空引きしない」という選択、あなたの新しいエアコンを確実に縮めることになります。1年後、2年後に「なんか冷えが悪い」じゃ済まないかもしれません。
この記事では、なぜ真空引きが絶対に必要なのか、省略したら何が起きるのか、そして正しいDIY取り付け手順まで、包み隠さずお伝えします。
なぜ「真空引き不要」という言葉に惹かれてしまうのか
まずは本音で話しましょう。
エアコン取り付けのDIY、最大の壁は「道具を揃えるのが面倒」これに尽きます。特に真空ポンプ。存在すら知らなかった人も多いはずです。
しかもネットを見渡せば「真空引き不要のクイックチャージバルブ」「ワンタッチ継手でポンプいらず」なんて商品がずらり。価格も手頃で、「これでいけるじゃん」と思ってしまうのも無理はありません。
さらに輪をかけてややこしいのが、「昔の職人は真空引きなんてしてなかった」なんて話。実際、R22冷媒の時代にはエアパージという、冷媒ガスで配管内の空気を追い出す荒技がまかり通っていたんです。
でもですね。時代は完全に変わったんです。
真空引きをしないとエアコン内部で何が起きるのか
ここからは少し専門的な話になりますが、あなたのエアコンを守るために超重要なことなので、ぜひ知っておいてください。
現代のエアコンは「空気」と「水分」が大嫌い
今どきのエアコンに使われている冷媒はR32やR410A。これらはR22とは比べ物にならないほど高圧で動作します。
で、この高圧冷媒、配管内に空気が混ざるとどうなるか。
まず冷却効率がガタ落ちします。冷媒が本来の力を発揮できず、設定温度に達するまで無駄に電気を食い続ける。電気代がじわじわ上がっていくわけです。
でも本当に怖いのはここからです。
空気中には必ず水分が含まれていますよね。この水分が冷凍機油と化学反応を起こすと、スラッジと呼ばれるヘドロ状の物質が発生します。こいつが配管内を詰まらせる。
さらに怖いのが、水分と冷媒が高温高圧下で反応してフッ酸という強力な酸が発生すること。これ、金属をじわじわ腐食させていくんです。コンプレッサーというエアコンの心臓部品が、内部から静かに蝕まれていくイメージです。
実際にあったDIY失敗のリアルな声
ネットの相談サイトを見ていると、こんな投稿がいくつもあります。
「去年自分で取り付けたエアコン、今年に入って全然冷えなくなった。業者を呼んだら真空引き不足が原因でコンプレッサーが焼き付いてる、買い替えですと言われた」
「クイックチャージバルブで取り付けて3年。異音がするようになって修理見積もり取ったら、修理代が新品購入より高いと言われた」
こういう声を見ると、浮かせた工事費の数倍のツケを払うことになるのが現実だとわかります。
しかもメーカー保証も効きません。取扱説明書にはしっかり「真空乾燥を行うこと」と明記されていて、この手順を飛ばした施工は保証対象外になるケースがほとんどです。
エアパージという禁じ手と現代の常識
「昔の職人はエアパージでやってた」問題についても、ちゃんと向き合っておきます。
確かにR22の時代、現場では冷媒を少し放出して配管内の空気を追い出す「エアパージ」が横行していました。でもこれ、フロン排出抑制法という法律にバッチリ引っかかる行為です。
大気中に冷媒を放出するのは法律違反。しかもR22と違って、R32やR410Aではこの方法では空気を完全に追い出せません。分子構造が違うからです。
つまり法律違反で、なおかつ効果も不十分。やる意味ゼロどころかマイナスでしかないんです。
正しい真空引きの手順と必要な道具一式
さて、ここからが本題です。「じゃあどうやって正しくやるの?」という疑問に答えていきます。
必要な道具を揃える
真空引きに最低限必要な道具はこちらです。
まず真空ポンプ。2段式と呼ばれるタイプを選びましょう。到達真空度が高く、短時間でしっかり空気を抜けます。1万円前後の製品で十分ですが、あまりに格安のノーブランド品は到達真空度が怪しいので避けたほうが無難です。具体的にはアネスト岩田 真空ポンプのような信頼できるメーカー品をおすすめします。
次にマニホールドゲージ。マニホールドゲージ R32対応で検索して、今お使いの冷媒に対応したものを選んでください。最近のエアコンはほぼR32なので、パッケージに明記されています。
それからトルクレンチ。これは絶対にケチらないでください。フレアナットの締めが緩いとガス漏れ、締めすぎるとナット破損。どちらもエアコン死亡フラグです。トルクレンチ フレアナット用が一台あれば間違いないです。
最後にリークチェッカー。ガス漏れ検知スプレーですね。リークチェッカー エアコン用で泡がぶくぶく出ればガス漏れしている証拠。石鹸水で代用することもできますが、専用品のほうが微細な漏れも見逃しません。
作業手順を頭に入れる
実際の流れはこうです。
配管を接続したら、マニホールドゲージの青いホースをエアコンのサービスポートに、黄色いホースを真空ポンプに接続します。
真空ポンプのスイッチを入れて、マニホールドの低圧バルブを開く。ここから15分から30分、ゲージの針がマイナス0.1メガパスカルを指すまでじっくり引きます。
到達したらさらに15分ほどそのままキープ。ここが肝心です。配管内の水分を完全に蒸発させるための時間。焦って飛ばすと後々響きます。
時間が経ったら低圧バルブを閉じてポンプを止め、そのまま5分間放置。針が動かなければ気密は完璧。もしじわじわ針が戻るようなら、どこかで漏れています。リークチェッカーを吹きかけて接続部を総点検です。
漏れがなければサービスポートのキャップを外して冷媒を開放。ガスが配管内に行き渡ったら、すべてのキャップをしっかり締めて作業完了です。
どうしても道具を揃えたくないあなたへ
ここまで読んで、「やっぱり道具買うの面倒だな」と思ったあなた。その気持ち、わかります。
でも選択肢は二つです。
ひとつは素直にプロに頼むこと。量販店の標準工事費は1万5千円から2万円程度。これには真空引きも漏れチェックもすべて含まれています。道具を買い揃えるコストと、もし失敗したときのリスクを考えれば、決して高くないはずです。
もうひとつは、どうしても自分でやりたいなら道具を惜しまないこと。エアコンは10年使う家電です。最初の一手間で寿命がガラリと変わります。
「真空引きしない」という甘い言葉に惑わされず、正しい知識と手順で、あなたのエアコンを長生きさせてあげてください。
最後にもう一度だけ言わせてください。エアコン取り付けDIYで真空引きしないリスクは、エアコンの寿命を縮めるだけでは済まないということ。あなたの大切な一台を守れるのは、あなたの選択だけです。

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